正しい借金の仕方

>私はコレで100億円なくしました! 宇宙科学研究所・桑原邦郎助教授

先祖伝来の土地を失い、妻の実家の商売も潰れ…

「研究者はただ研究すればいいんです」
 暗い話ばかりでウンザリしているサラリーマンも、この人の話を聞けば少しは元気になるに違いない。文部科学省宇宙科学研究所助教授の桑原邦郎氏(60)のことだ。研究に打ち込むあまり、個人で一時、100億円もの借金を抱えた研究オタク。その破天荒な研究人生が経済誌で紹介され、話題を呼んでいる。
 空気や水などの流れをコンピューターで解析する「計算流体力学」の専門家。70年に東大大学院卒業後、NASAエームズ研究所客員研究員などを経て、81年に東大から分離独立した宇宙科学研究所に。応用分野は飛行機、自動車、船舶の設計から血液の流れまで広い。
 その桑原氏が100億円というケタ外れの借金を抱えたのは……。
「流体力学の業績はコンピューターの使用量に比例する。ところが、帰国当時、東大では1台しかないスーパーコンピューターを1000人で使っていた。それで、85年に『計算流体力学研究所』をつくり、個人でスパコンを買ったのです」
 スパコンの値段は1台数億~数十億円。それを7台購入し、365日24時間フル稼働させた。電気代だけで月2300万円。研究員の給与も含め毎月2億5000万円かかったという。
「ウチは祖父の代まで東京・目黒区内で農家をやっていた。その土地をすべて抵当に入れて借金し、それでも足りずに区内の長者番付で1位になったこともある妻の実家からも援助を受けました」(桑原氏)
 おかげで日本の研究レベルは急上昇。研究員の中から20人以上が大学教授になり、残りも一流企業の研究者となった。
 ハイビジョンCG技術の進歩にも貢献し、90年放送のNHKスペシャル「銀河宇宙オデッセイ」のCG映像もこの「計算流体力学研究所」が作った。
 しかし、その“代償”は大きかった。借金の返済はほどなく滞って先祖伝来の土地を失い、妻の実家の商売も潰れた。スパコンもすべて撤去されたが、今も当時のスパコン以上の能力のあるパソコンを100台以上使って研究を続けている。助教授の給与も差し押さえられている。
 それでも桑原先生はサバサバした表情でこう笑い飛ばす。
「特許を取っていればカネは残っただろうけど、それだと他の研究者の自由な研究の妨げになる。だから特許は一切持ってない。研究者はただ研究すればいいのです」
 タカが数千万円の住宅ローンなんて小さい、小さい。

ニュースから。

「研究者はただ研究すればいいのです」って言葉がまかり通る世の中になって欲しい。

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